「破壊する創造者ーウイルスがヒトを進化させた」 (VIROLUTION(The Most Important Evolutionary Book Since Dawkins' Seifish Gene))2009年 |
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はじめに | ||||||||
進化の原動力は突然変異だけではない。 | ||||||||
第1章 ウイルスは敵か味方か | ||||||||
ウイルスが進化に大きく関与している。 | ||||||||
第2章 ダーウィンと進化の総合説 | ||||||||
現在主流である進化の総合説は自然選択説、突然変異説、メンデル遺伝学を基本とする。 | ||||||||
第3章 遺伝子のクモの巣 | ||||||||
ウイルスは遺伝子レベルで宿主と共生している。 ウイルスの繁殖は宿主に依存するので、宿主との共生関係自体が自然選択の作用に影響する。 この遺伝子レベルの共生は急激な進化を起こす可能性がある。 |
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第4章 AIDSは敵か味方か | ||||||||
ウイルスと宿主の共生は進化にとって重要なメカニズムだ。 エイズウイルスのように類縁の動物から感染したウイルスは致命的である。 しかし、もとの動物の利益になる相利的な関係に進む可能性がある。(攻撃的共生) |
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第5章 ヒトゲノムのパラドックス | ||||||||
ヒト内在性レトロウイルスレトロウイルスが宿主の遺伝子に組み込まれ内在化することは新たな生物の誕生でもある。 とすると進化は従来考えていたより速くかつ(直線的ではなく)網目状に起きることが分かる。 ※ヒトゲノムの解読によりウイルス起源の部分が多いことが分かった。(重要単語参照) |
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第6章 ウイルスが私たちを人間にした | ||||||||
ウイルス由来の割合が多いヒトゲノムは、ウイルスとのゲノム融合により生まれた。 これは攻撃的共生の結果であり、ウイルスは大規模な遺伝子改変により胎盤の形成を始め多くの利益をヒトに与えてきた。 |
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第7章 医学への応用 | ||||||||
内在性ウイルスはヒトと共生関係を続けてきた。 ヒトの脅威にもなり得るが、欠かせない役割も果たす。 ※病気との関係 HERV:Y染色体関連の病気と関係 LINE:機能遺伝子の多い箇所を避けるので原因になり難い。 SINE(Alu):画期的な進化をもたらす可能性があるが大惨事の原因にもなる。 |
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第8章 自己免疫疾患 | ||||||||
自己免疫疾患は免疫系が自らの身体の組織を自己と認識しなくなる病気である。 動きが速い脊椎動物の免疫系の進化にはレトロウイルスが関わっている。 ※ヒトの免疫系の自己認識の中核である遺伝子はウイルスに関わって進化した。 自己免疫疾患にはヒト内在性レトロウイルスが関わっているとの研究事例が多いものの、確かなことは分かっていない。 |
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第9章 癌 | ||||||||
ウイルスは癌の一因となり得るが、内在性レトロウイルスと癌の関係については分からないことが多い。 | ||||||||
第10章 新しい進化論 | ||||||||
進化の推進力に、従来の突然変異に加えて、@ウイルスとの共生発生と異種交配による遺伝子の水平移動、Aエピジェネティックスを加えるべきである。 ※水平移動はカンブリア爆発の大きな要因である。 |
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第11章 セックスと進化の本 | ||||||||
「異種交配は子孫が残せないので新種を発生させない」と考えられてきたが、多くの反証が見つかっている。 真核生物は、異種交配による多倍体化で新種を生んできたと考えられる。 |
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第12章 人間は多倍体か | ||||||||
進化の歴史では、多倍体化は2度起きた。 ※脊索動物から魚類が誕生する際と魚類と両生類が分岐する際 人間は何度も多倍体化を経験しているようだ。 これは恩恵をもたらしてもいるが、病気の原因にもなっている。 |
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第13章 遺伝子を操る魔神 | ||||||||
エピジェネティックスは、後天的な作用により遺伝子の発現が制御されることを指す。 これは進化の推進力になり得る。 |
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第14章 新しい手がかり | ||||||||
エピジェネティックなメカニズムは絶えず環境の影響を受け、支障があると癌を含む様々な病気につながる。
また、老化とも関係する。 これは操作可能なので、病気や老化への対策にエピジェネティックスを応用する動きは活発になってきている。 |
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第15章 旅の終わりに | ||||||||
従来の進化論(突然変異と自然選択によって起きる)は、遺伝可能な変異をもたらし得るメカニズムを考慮した形に現代化すべきである。(重要単語参照) | ||||||||
用語解説 | ||||||||
訳者あとがき | ||||||||
解説 生まれか、育ちかー”ウイルスもどき”がゲノムが語る生命の神秘 | ||||||||
参考文献 | ||||||||
★重要単語 | ||||||||
ヒトゲノムの構成 | 第5章 | |||||||
HERVとLTR | 9.0% | |||||||
LINE | 21.0% | |||||||
SINE | 13.0% | |||||||
DNAトランスポゾン | 3.0% | |||||||
不明 | 52.5% | |||||||
機能遺伝子 | 1.5% | |||||||
進化の推進力の比較 | 第15章 | |||||||
推進力の種類 | 遺伝子の変異 | ゲノム変異の特性 | 自然選択の 作用レベル |
系統発生の パターン |
環境による直接の影響 | |||
突然変異 | 起きる | ランダムでゆっくり | 個体、あるいは個体の遺伝子に作用 | 直線的な分岐 | 受けない | |||
共生発生 | 起きる | ランダムではなく急速 | 共生関係に作用 | 網目状 | 受けない | |||
異種交配 | 起きる | ランダムではなく急速 | 融合によってできたゲノムに作用 | 網目状 | 受けない | |||
エピジェネティックス | 起きない | 遺伝子ではなく発現が変化 | エピジェネティックな変異に作用 | 直線的な分岐 | 受ける |