「生きた化石と大量絶滅(メトセラの軌跡)」(ON METHUSELAH'S TRAIL)1992年
1 現象としての生きた化石(序説)
 断続平衡進化説は、「新種形成は急激に起き、以降形態変化はあまり起きない」として「中間形態の化石は存在しないこともある」と説いた。
 この新種形成は、大絶滅の時期に多く見られるが、その後、種分化が起きなかったのが「生きた化石」であり、その寿命が標準以上に長い訳を明らかにしたい。
2 骨格の夜明け(腕足類)
 カンブリア紀には大きな骨格を持った生物が出現し、生物の種類も個体数も増えた。
 腕足類も古生代に繁栄したが、ペルム紀末に大絶滅が起き、多くの生物が絶滅した。
 この時、腕足類も大打撃を受け、中生代には二枚貝がその地位を占拠してしまった。
 生きた化石:ストロマトライト(8億年前頃、ほぼ食べ尽くされた)
 生存理由 :他の生物がいない環境(高温、少雨で高塩分濃度)に適応した。
 生きた化石:腕足類リンギュラ(シャミセンガイ)
 生存理由 :競争相手や捕食動物が耐えられない環境に適応した。
      (例)堆積物中。塩分濃度が低い地域。
3 現代の捕食以前(平らな二枚貝)
 捕食者は生態系に大きな影響を与える。
 中生代初期までは二枚貝の殻は有効だったが、中生代には殻を破壊する捕食者が進化した。
 カニ、巻き貝、ロブスター、エイ、板歯類などである。
 二枚貝も、殻と筋力の強化、堆積物の中に逃げるなどの対策を打ち、幾つかは功を奏した。
 生きた化石:二枚貝
 生存理由 :カキ、イガイ・・極端な環境(温度、塩分濃度)に逃げる
       多くの二枚貝・・堆積物の中に逃げる
       ホタテガイ・・発達した筋肉による移動
4 海の怪物クラーケンの目覚め(オウムガイとアンモナイトの出現)
  オウムガイはカンブリア紀に進化した頭足類で、殻に守られ甲殻類、三葉虫を捕食していたが、デボン紀になると魚類が進化し、狩られる立場となる。
 【オウムガイの弱点】
  成長速度が遅い。(殻を作るのに時間が要る。)
  殻の強度が弱い。
  繁殖力が弱い。(子供が少ない)
 4億年前、オウムガイの一部が弱点を克服しアンモナイトとなった。
 具体的には、殻の強度を保ちながら使用する炭酸カルシウムを減らし(隔壁に皺をつける)、小さな卵を無数に産むことで繁殖力を高めた。
 この結果、オウムガイは減少し、アンモナイトは増加した。
 アンモナイトは、その後、多くの新種の誕生と絶滅を繰り返したが、6500万年前に絶滅した。
 その間、3度の大絶滅(デボン紀、ペルム紀、三畳紀)を生き延び、そのたびに大繁栄した。
5 ポリピーの死(オウムガイと最後のアンモナイト)
 白亜紀末には、アンモナイトは捕食者によって滅ぼされかけていた。白亜紀末の隕石(6600万年前)が止めをさした。
 生きた化石:頭足類のオウムガイ
 生存理由 :深海に卵を産み、幼生はそこで成長。
       成長後、浅海に現れた際には隕石の影響も薄れていた。
 生きた化石:アンモナイト(絶滅したとはいえ長寿)
 生存理由 :隕石がなければ深海で生き延びたかもしれない。
6 時間を超えたデザイン(カブトガニ)
 カブトガニは4億年前には登場しており、石炭紀に全盛期を迎える。
 その後、種の数は減ったが絶滅率も減った。
 生きた化石:カブトガニ
 生存理由 :浅い、汽水の湾など塩分濃度や食物供給が難しい特殊な環境に適応した。
       また、装甲に保護されており、化学的汚染にも強い。
7 春のおとずれ(植物が陸上に進出する)
 植物の上陸(菌類、藻類)
  土壌がまだない、強風の砂漠に上陸した。
  初めは湿度が高い所のみだったが、4億年前のデボン紀にはどんな場所にも進出していた。
 石炭紀(トクサ)
  トクサなどが大森林を形成した。両生類が繁栄し、爬虫類も登場した。
 デボン紀〜中生代中期(裸子植物、シダ植物)
  裸子植物(マツ、イチョウなど)は初めて真性の種子を進化させた。
 白亜紀(被子植物)
  白亜紀初期に突然進化、現在支配的な植物である。花をつけるという以外にも様々な有利な
  特徴を持ち、白亜紀半ばに発展し、後期までには征服を完了した。
 被子植物と動物(陸生草食動物と陸生昆虫)
  ジュラ紀には竜脚類恐竜が木を食べており、森は少なかった。被子植物の種子は消化されず
  世界中に広がった。森ができ密林となると竜脚類は姿を消した。
  白亜紀にはカモノハシ恐竜や角竜が被子植物を食べていた。
 生きた化石:植物全般(例:トクサ、モクレン、セコイア)
 生存理由 :記述なし
8 深海底からの発見(シーラカンス)
 デボン紀に、魚に似た肉食両生類が上陸した。
 上陸した両生類の先祖の候補は肉鰭類で、シーラカンスもその1つ。
魚類の系統
甲冑魚類 メクラウナギ、ヤツメウナギ
板皮類 絶滅
サメ類 サメ
硬骨魚類 条鰭類 現在一般的
肉鰭類 ハイギョ 見込み薄
扇鰭類 オステオレピスなど.古生代末に絶滅
シーラカン 中生代に再度繁栄
 生きた化石:シーラカンス
 生存理由 :海水は塩分が薄く魚類が少ない地域の深海に棲む。
        卵は体内に残り成体として産まれる。