「脳の意識 機械の意識(脳神経科学の挑戦)」2017年11月25日 | ||||||||
まえがき | ||||||||
意識の科学に新たな自然則を導入したい。 | ||||||||
第1章 意識の不思議(意識の定義) | ||||||||
意識とは、感覚意識体験(クオリア)である。 ※コンピュータは様々な分野で人間を超えたが、クオリアは持っていない(ように見える)。 視覚を例に取ると、クオリアは電磁波を脳が解釈し創り出したものだ。 これが実感できる例:錯視、夢、盲視、両眼視野闘争 脳はニューロンの塊だが、そこには自我につながる特別な仕掛けはない。 ※ニューロンの仕組み 入力:樹状突起、処理:細胞体、出力:軸索 @軸索始部で電気スパイク発生。 (NaイオンチャネルとKイオンチャネルの連携による。) Aシナプス間隙を隔てた次のニューロンの樹状突起に神経伝達物質が届く。 B樹状突起の電位変化が細胞部に集まる。 C閾値に達すると電気スパイクが発生。 |
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第2章 脳に意識の幻影を追って(意識科学の歩み(前編)) | ||||||||
知覚交代刺激(例:両眼視野闘争ネッカーキューブ、ルビンの壷)の研究が主流。 <分かったこと> ・ニューロンは網膜では点に反応するが、第一次視覚野では線に反応する。 ・ニューロンはアンケート方式で処理される。 ・網膜座標依存性、視覚野の最高次ITでの応答特性の明確化、図形アルファベット仮説、 般化など ・ニューロン計測で、視覚野の最高次ITには8割以上のニューロンが両眼視野闘争に連動 することが判明した。→意識の座というには不十分。 また、意識を担わないとの予想(※)があった第一次視覚野に10%のニューロンが意識に 上る可能性があると分かった。 ※論拠 @前頭前野に神経配線がない A無意識の情報が多い 例:色恒常性(第四次視覚野以降)、個視微動の補正 ・ fMRIの盲点を利用した実験では、意識と脳活動が一致 ・両者の違いは計測法の違いだった。 ニューロン計測:出力を捉えている fMRI :入力を捉えている これまで分かったことは意識と脳の連動だが、意識を担うことの定義は次の通り NCC:固有の感覚意識体験を生じさせるのに十分な最小限の神経活動と神経メカニズム このNCCに迫りたい。 |
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第3章 実験的意識研究の切り札 操作実験(意識科学の歩み(後編)) | ||||||||
(NCCの探究の手段)操作実験は、脳活動を人工的に改変し、脳機能に及ぼす影響を調べる ことで因果関係を明らかにする。 例:TMS(経頭蓋磁気刺激)、オプトジェネティクス TMS(経頭蓋磁気刺激) 刺激により、腕が動いたり、白い光(第一視覚野)を見たり、視野の欠損(スコトマ)が生じたり する。 ※スコトマの背景色は(意識にとっての)未来から補正される。 意識の時間の遅れ 脳への電気刺激は0.5 秒以上の刺激のみ知覚される。 皮膚からの刺激も0.5 秒遅れる。 @神経活動が意識にのぼるためには、0.5 秒以上持続する必要がある。 A意識の時間が現実から0.5 秒遅れている。 B知覚が発生したときには、刺激発生のタイミングまで遡って感じる。(主観的時間遡行) 主観的時間遡行を感じさせる例:野球の打者の主観 関連して、感覚意識体験は(意識にとっての)未来に、影響を受ける。 例:触覚ラビット |
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自由意志はあるか? 自由意志ではボールが打てない。←手首を動かそうとする前に脳が準備する。 選択盲の実験 モーション・フォスフィン MT野をTMS刺激すると静止画像の連続のように見える。 この現象に第一次視覚野の活動が不可欠と判明→でもNCCについては何も言えない。 オプトジェネティクス 光刺激で開閉する人工のイオンチャネルをニューロンに形成し、ニューロン種ごとに自在 に活動を操作する手法 ※ニューロンにはいくつもの種類がある おおまかには興奮性と抑制性に大別される 対象:今はショウジョウバエ、ゼブラフィシュ、マウスなど |
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第4章 意識の自然則とどう向き合うか | ||||||||
脳内のニューロンの働き、神経回路網としての働きには、意識の源となる仕掛けは見あたら ない。 これまでの意識の研究によると、意識と無意識が脳の広範囲に亘って共存している。 仮に、NCCが特定できても、クオリアが伴う理由は解明できない。 つまり、仕組みを解明しても脳の主観は解明できない。 例:風車小屋の喩え、サーモスタットの主観? 意識についても万有引力の法則、光速度不変の法則のような自然則が必要である。 ただし、検証可能性の確保が難しい。 人工意識について フェーディング・クオリア 少しずつニューロンを人工物に置き換えていけば、完全に人工でもクオリアは残るのでは? ノイマン型コンピュータでのデジタル・フェーディング・クオリアでもOKでは? 機械の意識のテスト(チューリングテストのようなもの) これを疑うと他人についても怪しくなる。 2つの脳半球は2つの意識を持つ。 通常は脳梁があるので統一されている。 半球を人工物にし、自らの主観を用いることで人工意識が確認できる。 |
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第5章 意識は情報か、アルゴリズムか | ||||||||
情報が意識を持つとする理論(自然則として) チャーマーズの情報の二相理論:全ての情報は意識を持つ トノーニの統合情報理論:統合された情報は意識を持つ ここで統合とは、全体としての情報量が、個々の情報量の総和より大きいと定義する。 また、独立、冗長、排他的な情報は統合しない 問題点:情報は解釈されてはじめて意味を持つ 神経アルゴリズムが意識を持つ(生成モデル) 次のような例からも脳は仮想現実を持つと考えられる チェンジ・ブラインドネス、ヒーリング・グリッド、幻肢 仮想現実の神経回路への実装ができれば、生成モデルは「人工意識の機械・脳半球接続 テスト」に耐え、意識の時間遅れを説明できる。 また、次のようなことも説明できる。 ニューロンの発火が場合により、なぜ違う感覚の体験を生むか 意識と無意識の切り分け(アルゴリズムでの位置付け次第) 生成モデルは、生成過程などを通して情報処理を進めるといった客観的な側面と生成過程 に沿った感覚意識体験を発生させるといった主観的な側面をあわせもつ。 |
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終 章 脳の意識と機械の意識(技術的展望) | ||||||||
脳と機械の意識の接続 脳につなぐに値する機械 現在はニューロモーフィック・チップ(IBM)がある。 ブレイン・マシン・インターフェース 侵襲のインターフェース(個々のニューロンレベルのやりとり)が要る。 DARPA(アメリカ国防高等研究計画局)の改革進んでいる。 意識の機械への移植 その先になるが、可能となっても移植は瞬時にはできない。 |