「眼の誕生ーカンブリア紀大進化の謎を解く」 (In the Blink of an Eye(The Cause of the Dramatic Event in History of Life))2003年 |
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はじめに | ||||||||
本書の目的は、カンブリア紀の爆発が起こった原因を解き明かすことである。 | ||||||||
第1章 進化のビッグバン | ||||||||
カンブリア紀の爆発とは、5億4300万年前からの僅か500万年間に、全ての動物門が複雑な外部形態を持つに至った進化上の大事変である。 動物門の体内の体制はカンブリア紀の爆発より1億2000万年前ないし5億年以上前に進化していた。これが5億4300万年前から5億3800万年前に、現生するすべての動物門が、体を覆う硬い殻を突如として獲得した。 複雑で硬い外部形態を胚から発生させるには多大なエネルギーが必要である。 この出費を促した要因を明らかにしたい。 ちなみに、これまでの説には全て有力な反証がある。 この本では、新たに「光スイッチ」説を紹介する。 |
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第2章 化石に生命を吹き込む | ||||||||
化石、有機物を含む遺体、生痕化石は過去を調べる手掛かりとして重要である。 ただし、その解釈は常に修正していく必要がある。 化石の解釈の精度は高まっており、また、新たな化石も相当数発見されているが先カンブリア時代からは現生動物に特徴的な外部形態の痕跡は見つかっていない。 |
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第3章 光明 | ||||||||
動物には体色がある。例えば、カメレオンやコウイカは、個々の色素細胞を操ることで体色を変えている。 生息環境の光に適応しなければ動物は生き延びられない。 自然界において意味のある色彩には、カムフラージュか自己顕示の意味がある。 カムフラージュや擬態では、色だけでなく形や動きも大事である。 また、化学的な色素とは違い、物理的構造でも体色を生むことがある。 |
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第4章 夜のとばりにつつまれて | ||||||||
光の少ない環境では多様性が減少し、進化も遅い。(個体数が必ずしも減るわけではない。) また、暗闇では眼が退化する。 |
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第5章 光、時間、進化 | ||||||||
光に適応して「防犯、目くらまし、求愛」のために、生物は様々な進化をしている。 | ||||||||
第6章 カンブリア紀に色彩はあったか | ||||||||
色素はあてにならないが、構造色なら化石から分かる可能性がある。 例:アンモナイトの光沢、甲虫の化石の反射多層膜 バージェス動物の化石にも回析格子の構造色があった。 |
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第7章 眼の謎を読み解く | ||||||||
光感知は様々な生物に見られるが、像を結ばない眼点は眼とはよべない。 眼には、単眼(窩眼(オウムガイ)、反射眼(ホタテ貝)、カメラ眼(標準))と複眼(個眼の集まり で、連立像眼と重複像眼がある)がある。 カンブリア紀に現れたコノドントはカメラ眼をもち捕食者だったと考えられる。 眼を持つバージェス産節足動物は珍しくない。 ただし、節足動物のみが眼をもっており、脊索動物も、まだ眼をもっていなかったようだ。 ほとんどの三葉虫は方解石ののレンズからなる複眼を備えている。 5億4300万年前には眼をもつ三葉虫が多くいたが、その前にはいなかった。 |
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第8章 殺戮本能と眼 | ||||||||
自然淘汰では補食関係が大きな要素となる。ここでも光が重要である。 眼の構造や位置は、動物が食物網のどの位置に属すかを示す。 例:捕食者は前面に2つの眼(立体視)、被捕食者は側面に1つずつの眼(全体を見る)を持つ。 カンブリア紀のカンブロパキコーペやサンタカリスも捕食者の眼をもっていた。 補食を示す化石は多い。 バージェス動物群の大型節足動物の大部分は捕食者。(噛み跡の化石もある。) ※三葉虫は補食性兼腐肉食性。 先カンブリア紀にも捕食者はいたがその活動はスローだった。 三葉虫が硬組織を身につけたのがカンブリア紀だった。 |
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第9章 生命史の大疑問への解答 | ||||||||
眼を持つ捕食者の存在が淘汰圧に大きな影響をもっている。 カンブリア紀に眼が初めて現れた(三葉虫)ことで、補食の効率が高まり、進化が急激に進んだ。 (硬組織など)これがカンブリア大爆発である。(「光スイッチ」説) 500万年程で小康状態になった。 外部環境を感知し認識する能力のうち、視覚以外の化学受容器(嗅覚、味覚)、機械受容器(触覚、聴覚)は徐々に進化したと考えられる。 それに対し光感知器(視覚)は最終段階で飛躍的に機能が向上する。 ※カンブリア紀以前に視覚以外の感覚が発達しており、その神経ネットワークを借用して 眼が機能するようになったと考えられる。 全ての動物は光に対して適応しなければならないが他の刺激についてはそうとは限らない。 生物の生き方にとって、とりわけ動物の外部形態に関して、眼の誕生は著しい変化をもたらした。 |
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第10章 では、なぜ眼は生まれたのか | ||||||||
眼の進化の引き金となったのは、地表面の日光の量が増大したことである。 日光の増量の原因については仮説にとどまる。 |